JDSFには、「社交ダンス」という用語は無く、
「ダンススポーツ」に代替しているので、
一部違和感がある所がある。

会員のページ6JDSFテキスト必修フィガー

JDSFダンススポーツ教程 2002年3月11日初版第1刷発行
編集:テキスト作成プロジェクトチーム
阿部 千栄子
池田 秀雄
牛込 恵子
鈴木 勝彦
瀧澤 弥
田口 順一
土谷 フオティ 美奈子
富永 純敏
中西 剛
仲野 巽
西久保 芳弘
山田 淳
吉田 大治郎
与風 和
Part 1 序説
求められる指導員像
1 現在の指導環境
(1)ダンススポーツの特徴

 スポーツは「身体」を強くし、健康を増進するだけではなく、爽快感や達成感、連帯感をもたらし、日常のストレス解消の手助けをしてくれます。近 年、こうした「心」の安定と豊かさが求められるようになっていますから、スポーツを楽しむことの重要性はますます高まっていくことでしょう。

 ダンススポーツには娯楽性、社交性、芸術性、スポーツ性などの要素がありますが、我々はその中でも特にスポーツ性に着目し、生涯スポーツとして、 また競技スポーツとしてダンススポーツを楽しみ、その振興に努めています。特にダンススポーツは、年令、性別を超えて、手軽に安全に楽しめる生涯スポーツ としての特徴を持っています。高齢化社会を迎え、生きがいと活力をもたらす生涯スポーツとしてのダンススポーツが果たす役割は、ますます重要になっていく と思われます。

 また一方、ダンススポーツは、その高度なスポーツ性によって、国際的にも競技スポーツとしての地位を確実なものにしつつあ ります。特に、国際オリンピック委員会(IOC)で、我々の上部団体の国際ダンススポーツ連盟(IDSF)が承認されてから、ダンススポーツのオリンピッ ク参加の可能性が高まってきました。また、(財)日本体育協会に加盟したことで、国体への参加の可能性も出てきました。こうした流れの中で、ダンススポー ツの競技レベルを向上させることは緊急の課題ですし、他のスポーツと同様に、スポーツ医科学を取り入れたシステマティックな指導方法の研究の必要性も高 まってきています。

(2)JDSFのサークル、クラブ

 現在JDSFには全国約2,500のサークル、クラブがあり、地域の体育館や公民館、学校などを拠点として、約45,000人の会員がダンスス ポーツを楽しんでいます。そのほか、数百万人の愛好家が、何らかの形でダンススポーツを楽しんでいます。それらの愛好家に対して、正しいダンススポーツの 練習方法、楽しみ方を教え、より早く、より安全・確実に上達できるよう指導することが指導員の役目です。このテキスト「JDSFダンススポーツ教程」は、 全指導員に、標準的で統一化された指導方法を理解してもらうと共に、会員にはいつでもどこでも、このテキストに基づいた指導が受けられるようにすることが 目的です。

 現在、多くの会員は中高年ですから、サークルの性格も生涯スポーツとして、健康的にゆっくりと技術習得を目指すタイプが多くなります。このタイプ のサークルでは、まず、音楽のリズムに合わせて身体を動かすことや、パートナーと一緒にダンススポーツを楽しむことが主体になります。体力に合わせ、安全 に気を配りながら、時間をかけて技術の向上を図ることがメインです。もちろん、会員同士の親睦も重要な要素ですから、ダンスパーティーを開催し、踊る楽し さを味わいながら、会員相互のコミュニケーションを図ることも有効です。

 技術向上がある程度進み、他人との技術比較を求めるようになると、会員は競技会への出場を目指すようになり、そうした会員、選手が中心になる競技 志向のサークルも増えてきます。そうしたサークルでは、サークル内で自発的に練習会を行い、競技力向上指導員や外部のコーチを招いて技術レベルの向上に努 めています。競技の場合でも、ダンススポーツ選手は幅広い年齢層に広がっていますから、それぞれの体力とレベルに合わせた練習メニューの工夫が必要です。 今後は、医科学的なアプローチも取り入れ、より効果的で安全な、技術と体力向上に向けた練習方法や指導法が必要になってくるでしょう。

(3)今後のニーズの多様化

 柔軟で順応性の高い若い身体のうちに、基礎的な技術を覚えこませることが効果的であることは、欧州でのダンススポーツで実証済みであり、また体操 や水泳など他のスポーツでも明らかです。将来のダンススポーツ発展のためには、若い年代に対してダンススポーツを積極的に勧め、将来のオリンピック参加を 目指して、本格的な競技力向上を目指すことが欠かせないでしょう。

 10代のジュニア、ユースを対象にしたサークルや、それらを受け入れるノウハウを持ったサークルの増加が望まれます。

 今後の指導環境は、子ども(ジュニア)向けの遊びと組み合わせたダンススポーツ、中高年向けの余暇活用と健康増進を目的としたダンススポーツ、体 力と技術の向上を最優先する競技志向のダンススポーツ……と多様化してくることでしょう。またサークルによっては、一つの中にそれらを混在させた複合型も 出てくるでしょう。

 ますます多様化する指導環境の中では、指導員はその特徴と目的をよく捉え、ニーズに合った指導法を工夫し、絶え間なく指導法を研究することが重要です。


2 ダンススポーツ技術習得の過程
(1)導入:「ダンススポーツうんどう」(レベル1、および2)

 ダンススポーツの技術習得の過程は、他のスポーツと同様に、全く「踊れない」というレベルからスタートし、順次技術が向上して最上位のレベル6「美しい、強い」まで進んでいくものです。

 まず、初心者は、踊れない、踊った経験もないわけですから、踊ることに不安(とりわけ異性のパートナーと踊ることに不安)を抱え、複雑に聞こえる音楽のリズムに不安を抱え、「踊れない」状態でサークルに入会してきます。これをレベル1としますが、このレベルではまず輪になって、音楽に合わせて身体を動かすことから始めます。

 音楽に合わせ、簡単な動作だけでリズムを楽しんでいくうちに、身体を通して音楽のリズムを感じるようになり、踊る楽しさを体感できるようになります。これは、「踊れる」ようになったレベルで、レベル2とし、レベル1と2を導入部とします。

(2)生涯スポーツ:「ふれあいダンススポーツ」(レベル3、4、および5)

 次に基本フィガーを覚え、ベーシック・リズムが取れる状態になります。色々なダンス種目と色々なフィガーに挑戦するのは、この段階です。この段階で基礎的な脚部・足部の使い方をしっかり習得すると、その後の上達度が違ってきます(レベル3)

 さらに、身体の各部、特に脚部・足部の動きとボディ(体幹)とのバランスとコントロールを習得すると、コントロールされた動きのある踊りができるようになります。新しい人と組んで踊っても、リードとフォローができ、パーティーでも踊ることを楽しめます。サークルでの練習会だけではなく、交流パーティーやダンスパーティーに参加し、腕試しをするようになります。これは「うまくなる」というレベルでレベル4とし、レベル3と4で生涯スポーツ部分とします。このレベル4では、ダンススポーツ競技に興味を覚え、競技スポーツを楽しむ人が出てきます。

(3)競技スポーツ:「競うダンススポーツ」(レベル4、5、および6)

 レベル4になって「うまくなる」レベルになると、他人との比較や、第三者の評価を求め、競技会への出場、競技スポーツとしてのダンススポーツに興味が出てきます。競技会に出場し、より高度な技術へ挑戦を始めます。ここでは基本的な脚部・足部のダイナミックな使い方を覚え、よりよいムーブメントの出し方に挑戦します。(レベル5)

 さらにレベルが進み、上級競技会へ出場するようになると、スピードとパワーを求めたり、脚力など基礎的な体力の向上に努めたり、高度な音楽表現に挑戦するようになります。このレベルを6とし、「美しく、強くなる」という状態で一応最上位のレベルとします。

 指導員は、会員の技術レベルの状態と目的をよく捉え、その状態に対応したそれぞれの指導方法を考慮し、計画的に指導を進めることが重要です。

ダンススポーツ3つの段階レベル到達目標発達度
導入ダンススポーツ
うんどう
レベル1輪になって身体を動かす
音楽と遊ぶ
踊れない



踊れる



うまくなる



美しく、強くなる
レベル2リズムを感じる
身体のバランスが良くなる
生涯スポーツ





競技スポーツ
ふれあい
ダンススポーツ





競う
ダンススポーツ
レベル3ベーシック・リズムがとれる
足型を覚える
レベル4リードとフォローを覚える
バランスとコントロールが良くなる
レベル5ムーブメントの表現に挑戦
脚部・足部の使い方を覚える
レベル6スピードとパワーがつく
高度な音楽表現に挑戦


3 求められる指導員像
(1)求められる指導員の要素

 指導員の役割は、会員のニーズに応えながらダンススポーツの楽しさを教え、自発的、積極的にダンススポーツ活動に参加し、多くの人たちが仲間入り するよう指導することです。単にフロアの上での技術コーチ的存在だけでなく、多様なニーズを持っている全ての愛好者の期待に応えることが求められます。

1 専門的な知識、技術を持っていること
 1.ダンス技術に関する専門的な知識と技術、豊富な経験を持っていること
 2.見本を見せることができる実技能力を持っていること
 3.技術のみならず、ダンススポーツの様々な環境や安全と健康、医科学的な基礎的知識を持っていること
 4.常に新しい知識と技術を習得する姿勢を持ち、努力を惜しまないこと
2 教える技法を知っていること
 1.技術の習得過程をよく理解し、段階的到達目標や内容を示すなど、計画的な指導ができること
 2.ダンススポーツの楽しさを教えたり、技術が上達する喜びを教えたりできること
 3.個人、サークルの目標をよく理解し、常に意欲と動機づけを与えることができること
3 サークルやクラブの運営、育成に指導助言できること
 1.サークル、クラブのリーダーと一緒に、運営や育成についての指導助言ができること
 2.未組織のグループに対しても組織化、活性化の支援ができること
 3.ダンススポーツ振興のための行事や、ダンススポーツ競技会に対する積極的参加、企画開催ができること
4 ダンススポーツライフの指導ができること

 単にダンススポーツの知識や技術を教えるだけではなく、会員個々の個性や環境を十分に認識しながら、会員の持つ可能性を引き出し、広い意味でのダンススポーツライフのよきアドバイザーとなれること



(2)日体協の「望まれる指導者像」

 過去、日本体育協会の「望まれる社会体育指導者像」というアンケート調査の中で、「指導者の自己評価」と、「被指導者が望む指導者像」のベスト5を見ると、多少の違いはあるものの、内容は共通していることがわかります。

 比率の高いものから並べると、「義務感が強く、活気に満ち、親切で信頼のおける人物で、その上、よい人間関係を維持しようと積極的に協力し、判断力に富んでいる人」ということになります。

 つまり、求められる指導者像とは、人間関係の面で指導的役割が果たせる人物であるということです。まず、信頼できる人間性を重視していることがわかります。

 ダンススポーツの発展のためには、一人でも多くの指導員が、資質を高める努力をすることが求められています。